◆◇◆ 魅力ある研究発表用ポスターを作るには ◆◇◆

魅力ある研究発表用ポスターを作るには
〜ポスターセッションと発表用ポスターについて〜

【投稿者】Mr. Engineering Design

10月9日から3日間、第17回の研究発表会が、室内環境学会との合同で開催された。合風22号の猛威にも負けず、熱気あふれる発表会であった。ポスターセッションによるポスター発表も多く行われ、優秀ポスター賞の選出も行われた。

筆者も、選出を依頼されたが、パワーポイントの出力を並べたものや小さな文字ばかりで構成されているものなどが多く、残念なから、賞に値するものは認められなかった。

筆者の勤務する大学では、学部2年生全員を対象としたある科目において、チームによる設計活動の成果をポスターにまとめ、ポスターセッションにおいて発表することを義務付けているが、全く未経験の学生諸君に対応を求めていることから、ポスターの作成方法等についてのガイドラインを提示している。このガイドラインをもとに、学生諸君はポスター1枚にそれぞれのチームの成果をまとめてくれている。小さいので詳細は読み取れないと思うが、図に示した例のように、立派な出来栄えといえよう。

我々の取り組みが最善のものとはいえないが、良いポスターの作成とポスターセッションの成功のために、何らかの参考になればと思い、このガイドラインを一部分修正したものを紹介する。

 ●はじめに
 ●ポスターとは何か? ポスターセッションとは何か?
 ●ポスターを効果的にデザインするためのガイドライン
  概 要
  質の高いポスターを、順を追ってデザインする方法
 ●ポスターの質を吟味するためのチェックリスト

ポスター画像

はじめに
研究や業務の成果を第三者に伝えるためのコミュニケーションの手段としては、一般に、ポスターセッション、口頭発表、文書による報告の3種類がある。各々の特徴は、一般的には、表−1のように異なっている。

表−1 コミュニケーションの特徴
ポスターセッション 口頭発表 文書による報告
時 間 ●3秒で参加者の注意を惹きつける
●30秒間でポスターの全体を判らせる
●3分間で質問に対して十分な情報を提供する
●一般的には、10〜20分 ●特に決まっていない。読み手の都合によって決まる
場 所 ●部屋やホールで、他の多くのポスターと一緒に展示される
●参加者は絶えず動き回っている
●限定された参加者を前にして、会議室などで行なう ●任意の場所。読み手の都合によって決まる
参加者 ●監督者、経営者、同僚
●潜在的顧客
●一般大衆
●限定的である ●極めて限定される
コミュニケーションの形態 視覚による
●A0版のポスター
●口頭による質疑応答
視覚と口頭による
●印刷物
●OHP
●パワーポイント
●身振りや動作
文書による
●印刷物

ポスターとは何か? ポスターセッションとは何か?
ポスターとは、一般的には、大きな紙や厚紙を使用して、その上に写真、グラフ、データ、文章などを視覚情報の形で提示したものである。効果的なポスターでは、取り上げている話題や研究成果の要点を簡潔に表示している。

ポスターセッションとは、オープンスペース(公開の場)にポスターを掲示し、参加者が自由に見て回れるようにしたものである。技術関係のポスターセッションでは、殆んどの場合、発表者がポスターの脇に待機しており、質問に答えたり、補足的な情報を提供したり、参加者がポスターに注目するように仕向けたりする。ポスターセッションの最終的な目的は、発表者と参加者の間でアイディアを交換し合うことである。

参加者がどのポスターを見るのかを決定する際の参考のためもあり、技術関係のポスターセッションでは、発表内容の概要(アブストラクト)を準備する場合が殆んどである。

ポスターを効果的にデザインするためのガイドライン
3−1 概 要
典型的なポスターセッションの雰囲気と状況は、以下のように表すことができる。

  1. 大量のポスターが掲示され、同時並行で発表が行われる。
  2. 参加者にとっては、全てのポスターについて、詳細にその内容をじっくりと読む時間が十分にとれることは殆んどなく、どのポスターを集中的に検討するかの選択を行わなければならない。
  3. 見学者として参加した人の殆んどは、どのポスターを読むべきなのかを予め考えて参加しているわけではない。多くの人は、展示会場を歩き回って、何らかの興味をひくポスターを探し回る傾向が強い。
  4. 「遠くからの見た目」の良いポスターは、参加した人にもっと近寄って検討しようと思わせるのに有効である。この「遠くからの見た目」という場合の距離は、ポスターから3〜5mの距離を考えればよい。
  5. 見学者がポスターと発表者に興味をひかれた場合、掲示されているポスターのデザインや内容を近づいて眺めることになる。見学者に興味を持ち続けさせるためには、ポスターの内容の質が高く、ポスターだけで全てが説明されている必要があり、また、明快で魅力的な図を使用した表現になっていなければならない。

上記の諸点から考えても、ポスターをデザインする場合には、ポスターの内容(即ち、ポスターに盛り込むべき情報)に配慮するだけではなく、ポスターの図的表現の魅力度についても配慮しなければならない。

ポスターは3〜5mの距離から眺めても魅力的である必要があるばかりではなく(遠くからの見た目)、見学者がポスターに近づいてぎた場合でも、興味のある内容や図的表現によって、その魅力を保持していなければならない(近寄った場合の見た目)。逆に、内容的にどんなにすばらしいポスターであっても、図的表現としての魅力に欠けるポスターは、見学者を惹きつけることにも失敗する恐れが大きい。

その他、留意しておかなければならない事項としては、

  1. ポスターの発表者が不在の時に見学者がポスターの前に来ることも考えられるので、ポスターだけで全てが説明されており、理解できる必要がある。
  2. あるポスターに興味を持った人達は、その活動内容についてより詳しく知りたいと考えることもある。発表者がポスターの前に居ることと、その発表者が質問に答えたり、ポスターの内容について説明することが、ポスターセッションを成功させるために必要な要素である。

3−2 質の高いポスターを、順を追ってデザインする方法
質の高いポスターをデザインするためには、以下の6段階を順を追って実施していく方法が有効である。
 第1段階:ポスターセッションの参加者と雰囲気を想定する
 第2段階:ポスター全体の流れと概要を決定する
 第3段階:ポスターに盛り込む資料を収集し、選択する
 第4段階:図的表現を取り入れる部分を選択する
 第5段階:収集した資料をポスターに表示する
 第6段階:ポスターを吟味し、必要に応じて修正する

[第1段階]ポスターセッションの参加者と雰囲気を想定する

ポスターの内容や様式は、参加する人達の要望と期待にこたえるものでなければならない。技術面に興味を持っている参加者やポスターが取り扱っている話題を良く知っている参加者には、図的な表現の独創性よりも、技術的な内容の深さのほうがはるかに重要であるといえる。これとは反対に、取り上げている話題についての知識が殆んど無いような一般の人々の場合には、ポスターで示されている成果についての理解を助けるような、背景となる情報を十分に示し、見た目が魅力的なポスターが重要であるといえる。

[第2段階]ポスター全体の流れと概要を決定する

ポスターだけで全て説明ができているようにするためには、ポスターそのものに一連のストーリーがなければならない。このストーリーには、タイトル、導入部(背景となる情報を含む)、取り組んだ問題の説明、方法論の記述、結果のまとめ、分析をそれなりにまとめたもの、結論が含まれているのが一般的である。

[第3段階]ポスターに盛り込む資料を収集し、選択する

前の段階で決定した節の各々(導入部、取り組んだ問題の説明、方法論の記述、結果のまとめ、分析、結論)に利用可能な全ての資料を収集し、その中からポスターに使用するものを決定しなければならない。

[第4段階]図的表現を取り入れる部分を選択する

ポスターのレイアウトを行ない、各節とそれに関係する資料の配置を大まかに決定する。各々の節や要素の大きさを決定する。各々の空間的な配置とそれぞれの大きさは、伝えようとしているストーリーを反映したものでなければならない。一般的には、重要な部分ほどサイズを大きくし、より注目される位置(例えば、ポスターの中央部)に配置される。伝えたいメッセージを補完したり強調したりするために、図的表現についても統一的なテーマを設定する(例えば、背景、字体、点を打つ、ボタン型を付ける、色使いを統一するなど)。図的表現についての統一的なテーマの選択については、最大限の調和が確保できるように、他の部分や要素の位置や大きさに効果的な影響を及ぼすものでなければならない。

見出しはメリハリの利いた表現で、内容を的確に表わすものでなければならない(序論や結論などの言葉は避けるようにする。また、第#章、第#節といった表現は絶対に使用してはならない)。説明内容は簡潔で(最大でも2文まで)、あいまいさが無く、要点を抑えたものでなければならない。補助資料は、読み易く、有意義な内容であり、また、できるだけ視覚に訴えるものでなければならない。

[第5段階]収集した資料をポスターに表示する

今までは大まかに決めてきた、ポスターに盛り込む様々な要素について、それらの性質、位置、大きさを決定し、試行錯誤により最終的なポスターを作り上げなければならない。求める効果が得られるまで、ポスターの各要素について、大きさを変更したり配置を変更したりしなければならない。ポスターについての中間的なチェックと評価のために、その概要を出力することも必要である。

[第6段階]ポスターを吟味し、必要に応じて修正する

最後の段階は、ポスターを公開発表の場に掲示する前の最終的な点検である。ポスターセッションで使用するものと同じ大きさで出力し、ポスターセッションの揚所と類似した環境で評価、点検することが望ましい。第三者にポスターを(肯定的な面と否定的な面の両面から)批判してもらう方法もある。こうした意見を参考にして、ポスターの内容や様式を改善する。コンピュータを使ってポスターを作成しておけば、必要と思われる回数だけ、何度でも修正し、再出力することも簡単に行なうことができる。この段階でのポスターの質の吟味が簡単にできるように、以下にチェックリストを用意した。

4 ポスターの質を吟味するためのチェックリスト
以下に示すチェックリストは、ポスターの出来栄えを評価し、改善するためのものである。ポスターを公開する前に、全ての関係者と、可能な揚合には外部の第三者とが、ポスターの出来栄えについて評価しなければならない。

1.ポスターの大きさ等は条件を満たしているか?
□ ポスターの大きさは所定の大きさ(AO版)になっているか?

2.ポスターは、対象としている参加者の興味を惹くものになっているか?
□ ポスターの内容は、一般的な参加者の興味を惹くものになっているか?

3.ポスターは「遠くからの見た目」において、魅力的なものになっているか?
□ ポスターは、注意を引き付けるようなものになっているか?
□ ポスターの主要な部分を、3mの距離から読み取ることが可能になっているか?
□ ポスターそのものも、ポスターの各部分も自明のものになっているか?
□ 各々の部分は、適当な空白を使って、明確に区別して示されているか?
□ 盛り込まれている内容は連携が取れているか?
□ 提示されている情報に、論理的な流れが認められるか?

4.ポスターを近寄って眺めた場合、よくわかる内容になっているか?
□ ポスターの内容は読むだけの値打ちのあるものになっているか?
□ 成果などの達成したことは、適切な形で明白に示されているか?
□ 文章の内容は十分に推敲されているか?
□ 文章の前後のつながりは滑らかになっているか?
□ 文章の論理は適切なものになっているか?
□ 文章は、文字の大きさや形式から見て、読みやすいものになっているか?
□ 文章は、行間、行の長さ、文字の色と背景の色との関係などから見て、すっきりしたものになっているか?

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