◆◇◆ 平成17年度通常総会 記念講演概要 ◆◇◆

愛知万博清掃メンテナンス事情

【講師】坂本憲三氏 愛知万博清掃共同企業体・清掃管理センター 統括マネジャー

環境博ともいわれる愛知万博は、環境に関するさまざまな試みがされており、本学会としても大いに注目するところです。
今回の記念講演は、清掃共同事業体の統括マネージャーとして、万博会場の清掃メンテナンスの陣頭指揮にあたっておられる坂本憲三氏をお招きし、業務内容や苦労話など会場清掃の舞台裏をお話いただきました。

●愛・地球博とは………………愛知万博の概要
●循環型社会のモデルに………環境への取り組み
●万博会場清掃業務の現実


●愛・地球博とは………愛知万博の概要

私は愛知万博清掃共同企業体というJVの構成会社の1社であるコニックス(株)の所属です。現在は、このJVの統括マネージャーとして、この構成会社4社と協力会社26社のスタッフの管理にあたっています。広い会場を5つのゾーンに区分けし、それぞれにマネージャーという責任者1名とその補佐をするスーパーバイザー2名が各部署をまとめ、清掃管理センターで私を含めて4名の統括マネージャーが、2005年日本国際博覧会協会(以下、万博協会という)との窓口や、関連部門との調整を行っています。

愛知万博(愛称:愛・地球博)のテーマは「自然の叡智」、サブテーマに「宇宙、生命と情報」「人生の“わざ”と智恵」「循環型社会」を掲げています。昨日(5月19日)現在の累計入場者は461万人に達しています。会場は名古屋東部丘陵にあり、主会場の長久手会場(158ha)と瀬戸会場(15ha)に分かれます。作業人員は少ない日で1日270名、多い日は1日400名で、入場者の予測数をもとに配置のパターンを組んでいます。


●循環型社会のモデルに………環境への取り組み

愛知万博は環境万博とも呼ばれており、環境に対する様々な取り組みがなされています。そのいくつかをご紹介します。

まず、サブテーマの一つ「循環型社会」ということで、自然環境の保護や3R(リデュース、リユース、リサイクル)を徹底し、環境に配慮した会場整備、会場運営を行っています。各パビリオンの建造物はモジュール方式(18m×18m×9mのユニットを万博協会が提供し、万博閉幕後、解体して再利用する)を採用しています。また、これまでのような開発型ではなく、自然の地形をそのまま生かした会場づくりをしています。

写真1グローバルループ起伏に富んだ長久手会場は、来場者が自由に移動できるよう、グローバルループという回廊が設計されています(写真1)。全長約2.6km、幅が21m、バリアフリー構造で最大傾斜は3度。ループの路面の中央部は廃木材50%と廃プラスチック50%の混合材を用いて、ここをトラム(電動乗り合い自動車)を走らせるために強度を高める対策をとっています。(実際は強度不足で、夜間にかなり補修しています。)そのほか木チップ舗装など、歩くと柔らかい感じのする床材が各所で使われています。しかし、実際に清掃の立場からいうと、何十万人の歩行に対してこのチップの結合はやはり弱く、チップの屑が排水口を埋めるなどの問題も起こっています。

写真2長久手日本館 次に、新エネルギー発電。会場の各所には、太陽電池パネルを利用した発電システムが展示され、活躍しています。またNEDO技術開発機構は、新エネルギー等地域集中実証研究の一環として「新エネルギー発電プラント」を建設し、燃料電池発電、メタン発酵システム、高温ガス化システム、電池電力貯蔵システムなどを組み合わせた発電を行っています。
写真3太陽光発電装置 次に、バイオラング。これは巨大な緑化壁で、長さ150m、高さが12mでかなり壮大なものです(写真3)。「バイオ=生物」「ラング=肺」を組み合わせた言葉で、「生物の力による都市の肺機能」という意味が込められています。地球温暖化やヒートアイランド現象などが顕在化する現在、心地よい都市づくりが重要な課題です。ここでは植物のもつ環境にやさしい面と美しい景観を同時に体感できるものとなっています。
写真4バイオラング 長久手会場の日本館(写真4)の屋根には、光触媒である酸化チタンが塗られています。これに水を張ると薄い膜をつくり、裏の室温を下げる効果があるそうです。
写真5ドライミスト また、水を使った技術としてドライミストがあります。名古屋の夏は非常に暑く、来場者に涼しさを感じてもらうために設置されています(写真5)。地上4mのところから超微粒子の人工の霧を発生させる装置があり、その霧が蒸発する際に、周囲の空気から熱を奪って冷却された空気が降りてくるという仕組みで、実験では平均して2〜3度温度が下がる結果が出ています。

廃棄物の削減と再利用ということでは、会場整備で既存の施設を解体したコンクリート塊を100%再使用。博覧会終了後の建築廃材も再資源化率95%を目標としています。瀬戸市はセトモノの生産地ですが、破損した陶磁器を細かな粒にし新たな陶磁器を再生するプロジェクトも進んでいます。

会場内の飲食施設で使用される1,000万個を超える食器類には生分解性プラスチックを採用。トウモロコシなどのでんぷんからつくられて、従来のプラスチックに近い機能をもっており、廃棄後に微生物の分解によって二酸化炭素と水になります。容器のほか、長久手日本館の外壁やごみの袋などにも使われています。

次に、交通手段ですが、愛知万博では様々な未来型交通システムが導入されており、長久手会場と瀬戸会場を結ぶ会場間シャトルバスは、水素を燃料として電気を作り出して走る燃料電池バスです。試験走行のときは、音がしないのでドキリとしたこともあります。それから、パーク&ライド方式という会場へのアクセス方法ですが、会場周辺の6つの場外駐車場を設け、そこから専用のシャトルバスを走らせます。業務上よく車を使う私たちには、渋滞もなく助かっています。


●万博会場清掃業務の現実

続いて会場清掃についてです。作業内容は、大きくはスイーピング(会場内の掃き掃除)、レストルーム(トイレのお掃除)、ダンプ(ごみの回収)に分かれます。

スイーピングという作業は、会場内のごみを拾い掃きしてまわるもので、技術的な部分はそう多くはないのですが、広い会場を歩きまわるだけでひと仕事です(写真6)。この作業でとくに必要なのが、来場されるお客様への対応です。会場内には専門の案内係がいますが、お客様は当然それを区別しません。ですので、私たちは同時に案内係や救急の場合のお手伝いもしますし、場合によっては写真撮影もします(写真7)。

写真6スイーピング作業 写真7お客様への対応
このなかでとくに力を入れているのは、「オーバーラップ清掃」ということです。作業者はあるエリアを受け持っていますが、会場にその線が引いているわけではありません。お互いが自分の範囲を少しずつオーバーして、切れ目なく全体の作業ができるようにオーバーラップして作業を行います。また、作業の役割分担はありますが、それにこだわることなく、例えば床にごみが落ちていれば、ダンプの担当者であれ、レストルームの担当者であれ拾いましょうというような、作業のオーバーラップ。それから作業時間は朝7時半から夜10時半までですが、作業シフトもダブるように3つのシフトで組んでいます。このように、いろんな場面で抜けがないよう作業を行っています。

写真8レストルーム作業

次に、レストルームの作業(写真8)。この会場はトイレの規模も大きく、場所によっては女子トイレの個室が60数個並んでいるところがあります。それでも長い行列ができるときもあり、ペーパーの交換すら難しいのが現状です。
写真9ダンプ作業 それから次に、ダンプ作業(写真9)。これは手押し式と電動式のカートを使い、会場内のごみを回収する作業です。

写真10来場者自身による分別会場内で発生するごみは9つに分別されます。
(1)生ごみ(食べ残し、分解性プラスチック容器)、
(2)割りばし、(3)ペットボトル
(4)プラスチック類、(5)紙コップ・紙飲料容器
(6)新聞・チラシ・雑誌・パンフレットなどの紙類
(7)燃えるごみ、(8)燃えないごみ、
(9)飲み残し水。
これを、お客様にしていただくようになっています(写真10)。

会場にはごみ箱ステーションというものがあり、ごみ箱が十何個並んでいます。このごみの分別は慣れている人でも一瞬迷ってしまうだろうと思います。ましてや外国からのお客様は、理解しがたいという人もいるようで、分別方法を説明するためにボランティアの方にも協力してもらっています。万博協会でも「ごみ処理の手引き」という冊子を出していますが、まだ十分には理解されておらず、パビリオンの裏手にごみが積み上げられていることなどもまま見受けられます。

それから、私たち清掃担当者というのは仕事の性質上、設備の不備・不具合をいちばん発見しやすい立場にあります。そこで各ゾーンからいろんな情報を集めまして、施設の不具合管理簿をつくり、万博協会に毎日報告しています。一時は1日十数件の日もありました。いちばん多いのがトイレの不具合、例えば水が出ない、水が漏れている、ドアが開かない・壊れたなどです。また会場全体で多く使用されています木ですけども、とくに床面に使用されている天然木は、多くの人の歩行で板が壊れたり、雨などの影響で反り返ったり、ゆがんだりという報告もけっこうあります。

最後に、世界中から多くの国々の人が集まりますと、会場内でもいろんなことが起こります。これは私たちがいちばん困ることですが、開場前に見回りしますと、トイレットペーパーや手洗い石けん(据え置き式)が夜中の間になくなることがあります。そのためか、ペーパーの消費量も1日約3000個にのぼり、ちょっと多いような気がしています。また、朝トイレ掃除に行きますと、上半身裸で体を洗っている外国の方もおられます。なるほど習慣も違えば考え方も違ういろんな人たちが集まれば、いろんなことも起こるものです。残り4か月、まだまだどういったことが起こるか、半分たのしみでもあります。

このように、会場に来られるお客様がより快適に、より気持ちよく観覧できるよう、観客サービスの一環として日々頑張って務めている次第です。

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